ここからナビゲーション

山形県産品ポータルサイト いいもの山形

ここから本文

用と美のこころ 暮らしの道具に備わる生命と機能美を感じて

堂々とした風格、薄手で繊細な肌合。山形鋳物は1000年にも及ぶ歴史に裏打ちされた、高い技術力で知られている。なかでも、暮らしの道具としての鉄瓶づくりを主たる事業に掲げ、伝統の技を次代に繋ぐべく歩みを進める長文堂 長谷川光昭・多恵子夫妻を訪ね、そのプロダクトの秘めたる魅力を探る。

―鉄瓶は、どのようにして作られるのでしょう。

長谷川(光):すべては鋳型の製作からはじまりますが、鋳型自体も胴体と底、注ぎ口など3つのパーツに分かれているので、完成まではそれぞれ合わせて100程の工程が必要です。鉄瓶づくりのクライマックスは注湯ではありますが、私たちが最も神経を使うのは鋳型の製作。

長谷川(多):いくらうまく鉄を流し込んだとしても、製品としての良し悪しは、鋳型の出来で決まってしまうからです。

薄手で繊細、美しい鋳肌。薄肉美麗と称される山形鋳物の厚みは2.5mm程。他の産地の多くは3〜4mmです。微々たる差に見えますが、簡単には埋められない差であり、それこそが山形が誇る技術。鋳肌の美しさも、鋳型づくりのなせる技なのです。とても緻密な作業だけに、ひとつの鉄瓶を完成させるには数ヶ月を要し、結果的に高価なものになってしまいますが、私たちは他産地の製品に引けを取らないものだと信じて作り続けています。

―今の時代に合うように、心がけていることは

長谷川(光):注ぎ口の水切れの良さを高めるなど、性能を上げるための微調整はしますが、基本的に私としては、初代である祖父のデザインを変えることなく作り続けています。若い頃は新たなデザインを模索したこともありましたが、学生時代に地域デザインを学んだからか、長く使われているものには、理由があると思うのです。私にとって60年前に考案された鉄瓶「なつめ」は、山形鋳物の特徴である無地の鋳肌の美しさ、また使用感を両立する、完成された存在なのです。

長谷川(多):だからこそ私たちは、鉄瓶がいかに現代の暮らしにフィットする製品なのかを伝えることに力を入れています。例えばIHでも使えること、お手入れがいかに簡単か、長年使用することで性能が向上することなど、使ったことがないから知ることができず購入のハードルがどうしても高くなってしまう。

長谷川(光):知ってもらって、興味を持ってもらうこと。それは、山形鋳物の技術を次の時代に伝えるためにも、とても大事なことだと感じています。

―使い続けるほどに性能が向上するというのは

長谷川(光):内側に生じる錆は湯アカを纏うことで、さらに湯をまろやかにします。漆を焼き付けた鋳肌も、使い込むほどに艶を帯び、侘び寂びに通じる美しさを醸します。味わいも見た目も経年美化していくことから、“育てる道具”であるとお伝えするようにしています。5年、10年と一緒に暮らした鉄瓶の味わいには、自分で育てるからこその変え難い愛着と魅力が生まれるのです。

私はこの山形鋳物の鉄瓶の良さを伝え、山形の文化として次代に繋げることを目標にしています。私たち鋳物職人が、やりがいを持って鋳物を作っていることが多くの人に伝われば、興味を持ってくれる方が増えるかもしれない。そうやって、ものを残し、技術を残して、山形鋳物という伝統が後世まで永く続くことを望んでいます。

山形鋳物の粋を集めた鉄瓶。お湯を沸かすことだけの為に作られたこの道具には、時間を経ても色褪せることのない美しさが備わっている。それは、古来より今日まで、鋳物職人たちが脈々と繋いできた技術と情熱の賜物にほかならない。皆さんもこの素朴でいて美しい暮らしの道具に触れ、用と美の心を感じてみてはいかがだろう。

山形鋳物

発祥は約1,000年前の平安後期。源頼朝が奥羽平定に乗り出した際、従軍していた鋳物職人が、山形市内を流れる馬見ヶ崎川の砂と付近の土が、鋳物の「型」に最適であることを発見し、数人がこの地に残ったことが始まりと伝えられている。機械鋳物と工芸鋳物に大別され、茶釜や鉄瓶、花瓶、鉄鍋といった生活工芸品は1975年に伝統的工芸品に指定されている。伝統に磨かれた独特の鋳型づくり、文様押し、肌打ち、漆仕上げ等、非常に古くからの技法のため手間と高度な技術が必要とされるが、これにより山形鋳物の「薄手で繊細、美しい肌」という最大の魅力を創りあげている。

長文堂代表 長谷川光昭 山形市出身。山形鋳物を生業とする家に生まれるも、大学では地域デザインを専攻し、工業とは別の視点で地域の産業を学ぶ。その経験は山形鋳物が本来持つ意味を見直すことに繋がり、現在は同社3代目として、伝統の技術を次代に繋ぐべく活動を続ける。

長谷川多恵子 米沢市出身。夫・光昭氏との結婚を機に、山形鋳物の仕事に携わる。現在はInstagramや鉄瓶レンタルへの問い合わせなどに対応するなど、主に同社の広報部門として従事。ほか、鉄瓶の摘み部分を製作するなど、鋳物のパーツ製作にも関わっている。

紹介ページはこちら

長文堂では、工房見学ができるほか、工房そばにショップを設けていて、職人の話を直にきいたり、産品を見比べたりしながら、購入・注文することができます。また、鉄瓶をお試しできるレンタルを行っています。「鉄瓶でお茶を飲んでみたい」「自分の生活に合うか分からない」「買う前に試してみたい」など、気になる方はぜひお試しください。鉄瓶の楽しみ方やお手入れ方法を記載した説明書もあるため、安心してお使いいただけます。鉄瓶のある生活を気軽に始めてみませんか?

実施期間 :10月〜3月
レンタル期間 :3週間
金額 :¥5,500
対象鉄瓶 :なつめ・容量1.5L、なつめ小・容量1.0Lの2種類
申込先 :長文堂オンラインストア https://chobundo-yamagata.stores.jp
問合先 :info@chobundo.jp
電話 :023-643-7141

※レンタルの詳細はSNSや店舗へお問い合わせください。

使用したのは、内容量1Lの鉄瓶「なつめ小」です。主人と二人暮らしの私は、一度に少量のお湯しか使いません。だから、一緒にお茶をする時も、ちょうど飲みきれるこのサイズがぴったりでした。お湯も、普段やかんで沸かした時より柔らかく感じられ、お茶が美味しく感じられました。思いのほか軽く、手入れも簡単なので、すぐに欲しいものリストに入りました!

ページ上部へ