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一期一会のものづくり 伝統工芸品から生まれ出る時代に合わせた新たな試み

将棋の駒づくりで有名な天童市は、古くから家具や建具をはじめとする木工業が盛んな街として知られている。同市のシンボルである舞鶴山の麓近くに、木製品のOEMを主軸としながらも、自社ブランドの開発に積極的に取り組む企業・佐藤工芸はある。若い女性の職人が多く在籍し、それぞれの発想を活かして活躍しているという同社。今回は代表取締役・高橋裕子氏を訪ね、ものづくりへの思いと、その先に見据える未来について訊く。

―佐藤工芸さんのものづくりについて教えてください

高橋:天童市に拠点を持つ弊社のルーツは、将棋の駒づくりにあります。その後、創業者が手彫りからNC加工機による加工に移行したことで、仕事の裾野が広がりました。事業の主軸は家具メーカーの部材製作などのOEMで、我々の木の性質を熟知した仕事は、多くのクライアントの皆様よりご支持いただいています。しかしながらOEMだけでは、自分達の仕事を多くの人に見ていただくことはできません。そこで培った技術を世の中に知ってもらうためにも、私が中心となり自社製品の開発に乗り出したのです。

2011年の東日本大震災後に、山形県工業技術センターからの誘いを受け、はじめて自社製品として開発したのが「もしもクロック」です。万が一の備えをという思いを込めた置き時計で、中に災害時の非常食としてチョコレートを収納することができます。その後も木加工の際に出る端材を製品化した、ステーショナリー「mokuhen」シリーズや、さらには弊社のルーツである将棋の駒をリブランディングした飾り駒「左馬NEO」も開発するに至りました。現在まで都市部の展示会にも積極的に足を運びましたが、携えた製品を見た人々の反応から、弊社の技術で新たな分野へ踏み込むことができると確信しています。

―自社ブランド開発にかける情熱はどこからくるのでしょう

高橋:地元に根付いている木工業という産業を、絶やしたくないという思いからでしょうか。伝統工芸品は現代の暮らしの中では購入のハードルが高く、例えば昔ながらの将棋の飾り駒は生産が激減しています。しかし、製品自体の大きさを縮小し、角度に柔らかさを出した「左馬NEO」は、若い方にも受け入れてもらえています。デザインや見せ方で、買い手の反応は変わる可能性を感じています。

技術を繋げようとしないと、次世代に残せるものでは無いと考えています。その意味では、私達は伝統工芸品で培った技術のコアな部分を守りながら、いかに今の時代に合わせられるかをこれからも模索していきたいです。そしたらその先に、私も木工所で働きたいという若い方が増えるかも知れない。若い社員さんは企業にとっての希望ですから、技術をどんどん吸収してもらって、新しいものを世に出してほしいです。

―新人のお二人の、木製品のものづくりへの思いをお聞かせください

菅野:木工の仕事をしていた祖父の姿に憧れて、私も木工の仕事に携わりたく入社しました。今はまだ駆け出しですが、いつかは立派な職人になって、新しい製品を作りたいです。

石山:表面の仕上げなどを担当していますが、お客様に木製品の魅力を感じてもらえるように、思いを込めて磨き上げています。

高橋:木目って木が生きた歴史で同じものが一つとありません。いつも木を扱っている私達も、好きな木目に出会った時は感動するものです。それは、私達作り手と素材も、製品とお客様も、また会社と働き手もある意味一緒で、一期一会の出会いから全ては始まります。だからこそ、それぞれの出会いを大切にしながら、今後も自社ブランドの開発に努めていきたいです。いつか、地元の産業を盛り上げる一助になれたなら、私も笑顔で若い世代に会社を託したいですね。

地域に開かれた工場を目指し、2023年春に社屋を自社ブランドの販売スペースも兼ねて新装オープンした佐藤工芸。週末はカフェとしても営業していることから、多くの人々が行き交いますが、実際にオリジナル製品を手にしたお客様から、生の感想をいただく機会も多いそう。一期一会のご意見は次回の製品づくりに活かされ、同社の時代に合わせた新たな試みに繋がっている。

天童市の木工業

現在、将棋駒の生産が、日本の9割以上を占める天童市。その天童将棋駒振興のきっかけは、江戸時代後期に天童織田藩が藩士に内職としての「将棋駒」つくりを奨励したこととされています。その木工業が盛んな土地に、1940年には大工や建具、指物といった業者が集まり職人の組合が結成されました。以来、世界的に名を馳せる木工家具メーカー天童木工を代表格に、木工業は今もなお地域に根付いています。

佐藤工芸代表取締役 高橋裕子 岩手県盛岡市出身。33歳の時、ものづくりへの憧れが高じて同社へと入社。将棋駒のNC加工などに従事するも、リーマンショック直後の売り上げの激減を受け一念発起。取締役専務として全国を営業で飛び回り、OEMの新規受注や自社製品を開発する。令和元年より代表取締役に就任。

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佐藤工芸では、レンタルスペースと自社ブランド製品のショップ、週末のカフェ営業を兼ねた社屋「kokochi-kigi(ココチキギ)」にて木工ワークショップを定期的に開催し、木の温もりや木工品の良さを体験できる場づくりをしています。皆さんもぜひ足を運び、それぞれに表情の違う木工品との一期一会の出会いを楽しんでみませんか。

kokochi-kigi
ファクトリーショップ
営業時間
:月曜〜土曜10:00〜17:00
カフェ
営業時間
:月曜〜土曜10:00〜17:00 LO16:30
問合先 :023-653-3164

※お支払いは現金のみ
※イベント出展やレンタルスペース予約などにより、休みの場合があります。
詳しい営業スケジュールはInstagramをご確認ください。

くぎとかなづちでつくる「チェア」、木工ボンドで簡単につくる「丸コイス」など、4種の幼児向けワークショップから選んだのは、「くぎでトントン」のかわいい小椅子づくり体験。久しぶりに木に触れ合い童心に返ったようで、ただただ夢中になりました。金槌の使い方も初めて知ることが多く、子供だけでなく親御さんにもおすすめです。木工ワークショップのスケジュールはInstagramで確認できるそうです。

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